<< 百年新報 (1912.10.08) | main | 百年新報 (1912.10.09) >>

続・江戸の話 十八


 江戸での生業の話、前回は御役人付売に関連して武鑑の話をした。そういえば、この生業の話では、武家の話をしてこなかった。今回は、武家の生業の話をしよう。武家の生業というのも妙な話であるが、消費都市である江戸では、金はあって困るものではない。それ故か、一種の副業・内職を行う武家もいたのである。
 先ずは銭蓙(ぜにござ)売。
ぜにござ
「ぜにござは反故紙を捻て筵に編みて売る大さ畳と同く或は半畳の大さもあり市中の工は無之内職と号て武家奴僕の私業也足軽の内職也用之は両替店は必ず其他も銭を多く扱ふ店は用之銭筥(はこ)を開て緡に指す時等専ら用之」
とある。銭蓙売そのものは武家ではない。銭蓙の製造を武家の奴僕・足軽が製造したのである。古紙を茣蓙状に編み上げたもので、銭を数える、或いは銭緡に指す際に用いた。板の上に銭を直接置くよりも、適度に粗い茣蓙の上の方が扱いやすかったものであろうか。
 とはいえ、紙製の茣蓙であるから、かなり傷みやすいものであったようだ。
「蓋売巡る物は未渋を用ひず買得て後に柿渋にひたし乾て用之は甚だ久しく損せず」
とあり、購入した後で柿渋に浸して強度を補って用いることもあったようだ。このような用いられ方が常であるならば、あらかじめ柿渋に浸しても商っても良さそうなものだが、売っている時点では渋を用いていないという。あるいは持ち運びの弁のためかも知れぬが、詳らかではない。

 次ぎに、くご縄売。
「くご正字を知らず水辺に生る草名也以て極細の縄を製す是亦武家の内職なれども銭ござは足軽是は中間の私業を専とす(くごはこもの誤歟)諸賈の紙色の品物の他郷に贈る等専ら用之又料理屋にて折肴をも用之て括之大森の「なめもの」等曲物入に専用之す」
とある。これもくご縄売そのものは武家ではない。製造を行っているのが武家なのである。くご(くぐ・莎草)縄は、名前の通りくごで作った縄である。「極細」とあるが、今日思う程細いものではない。今日見ることは稀であるが、徳利や大福帳を吊す縄、折り詰めなどを結わえる縄が、それである。
 さて守貞、「くご正字を知らず水辺に生る草名也」と記しているが、これには追記がある。
「追考くご縄は灯心殻を以て製するなり則藺縄也荒物店にても売之也」
という。「くご縄」は「灯心殻」で作るという。灯心には藺(い)草のなかごを用いる。「灯心殻」というのは、藺草の殻、つまり皮の部分である。つまり「くご」は「藺」である、というのが守貞の推測である。くご(莎草)と藺草は別の植物だが、どちらからも縄を作ることは出来るだろうから、あながち間違っているとも言えない。確かに、藺草の殻も、ちまきを結わえる際に用いることがある。


是非、ワンクリックをお願いします。
0
    是非クリックお願いします

    表示中の記事
    Amazonリンク
    カテゴリ
    検索
    メールフォーム
    ご感想等はこちらからお願いします
    過去記事
    プロフィール
    リンク
    そのほか
    Mobile
    qrcode
    Powered by
    30days Album
    無料ブログ作成サービス JUGEM